七夕の今夜の月は、西空に細い夕月。
薄い雲に星たちも滲んでは消える。

すっかり日は暮れても、織姫と彦星の再会は今年も
密会のようだ。もともと他人様の逢引などまるで関心もなく、
天の川さえ見えない大阪の空を怨めしく睨むだけ。
火照った庭の草木に水をやる。
乾いた熱い土が水を吸い、水を浴びた草木が放つ匂いが好きだ。
人の気持ちが冷めてゆく時は、こんなにいい匂いはしないものだ。
庭の草木の火照りがおさまるころには、その熱がまるでこちらに乗り移る。
水を撒き、水を打っているのにこちらは汗水が流れる。
だけど、それも嫌いじゃない。
空蝉にも水が跳ねる。
そう言えば、今朝から蝉が鳴き始めた。
日夏耿之助の季節がはじまる。