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手紙 11月8日

母はよく手紙やはがきを書いていました。
ときどき、いろんな方々から、
「典子さんのお母さんからいただいた手紙は宝にしています」
といわれることがあります。


メール通信が発達してくると、手紙どころか、

FAXでさえ疎ましくなるほど便利だしスピーディーなのです。
だって高い電話代を払わなくてもスカイプでニューヨークの人たちとも、

世界中の人たちともテレビモニターで顔を見ながら、

無料で話すこともできますし。

だからこそ手紙文化は、

相手様への思いと敬意の重さの比重が大きくなっていると思います。

いつも顔を合わせている人でも、ときどき顔を合わせている人でも

「手紙」はある種のラブレターであると思うのです。
それを読んでくださる相手様の反応は、

自分にはわかりませんが、

そろそろとどいているかしら・・、

どんなふうに受け止めてくださっているかしら・・と、

想像する時間というのが、

人間関係を潤滑に深めてくれるのだろうと思います。

しかも直筆とかになってくると、

その重みはますますです。

人様にお世話になった、何かをいただいた、

御馳走になった・・お給料をもらった・・
そんな時には、その終了時、そして翌日、あるいは次に会ったとき、

きちんと感謝の言葉、御礼を言える人が少なくなりました。

モノがあふれる時代に「与えられること」が当たり前の世代、

そしてそれをきちんとしつけられていない親や保護者、

いい年して、そんなことを学べていない人。
「与える」側に立ったことのない人、はわからないですね。

それはお金やモノではなくその裏側にある人様の愛情がわからないということです。

私はそう思っています。
だから今から直筆で手紙を書きます。

その時間をつくることがまず、相手様への感謝であり敬意です。

忙しいなんて言い訳にならない。
さて、はがきや便箋、切手までどれにしようかな・・と考えて。

千宗室さんが随分前に、書かれていたエッセイのなかで、

なるほどなあと思う文章がありました。

このごろの大企業のお偉方のなかには、

何かの案内にしても、礼状にしても通り一遍の無味乾燥な、

できあいの文章そのまま送ってくる人がいる。
心無い手紙は心には残らない。

そんな手紙をいただいた時には、

その企業の行く末が、見えてくるようで寒々しくなると。

へえ、千宗室さんのような方にも、

そんな手紙が届くんだと思いました。

おそらくは、礼状もパターン化されて、

さっさと出せるように会社の社員が何百枚も用意してあるものなんでしょうね。

そんな手紙をもらっても、

相手から大切にされているとは思えないですね。
ああ、あの人にとって、あるいはあの会社にとって、

自分はこの程度の存在なんだと受け止められても仕方がない。

それはメールであっても同じことですね。
同じメールでも、「定型版」か?みたいなものもたくさんあります。

秋も深まってきました。

手紙を書くにはいいシーズン。

大好きな虫の音でも聞きながら相手様のお顔を思い浮かべながら、

短くても、字が下手でも精一杯思いを込めて書くとしましょう。