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のりこの部屋
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記憶の断片 11月28日

低く垂れこめたグレーの厚い雲に覆われた空。

こんな日は、

西の海の船の汽笛がこだまして、

東の空から聞こえてくる。

 

船がでる。

幼いころから、

この汽笛を聞くと見たこともない船を思い浮かべて、

どこへ行くのだろうと、考えていた。

 

太陽の見えない薄暗い空気の中で、

初冬の肌寒さや雨の冷たさが 汽笛の響きをどこか

ものがなしいものに仕立てている。

 

今日もそんな汽笛が聞こえる。

 

表に出ると強い風に吹き飛ばされた、

木の葉がいたるところに落ちている。

 

人は記憶の断片と時のかけらを ひろい集めて

生きつないでいる。

 

何事の おはしますをば しらねども

かたじけなさに 涙こぼるる

西行法師

 

 

過去の栄光に生きるあなたよ。

もがきながらも 共にもう一段 階段をのぼろうではないか。

今を生きようではないか。

たしかに人生の時は短い。

今日が明日には過去になる。

わたしは精一杯 今を生きたい。

月並みな私にとっては、

それができれば、無上の喜びです。