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もう一つの卒業式 3月14日

今日は息子の卒業式と謝恩会で1日がかりでした。
毎年寄せていただいている長尾中学校の卒業式には、
残念ながら出席できませんでした。

でも気になっていた、ある生徒のために、
今日の夕方 その生徒のためだけの卒業式が
南区の某堺市立中学校の校長室で執り行われました。

確かに今、堺市内の学校園では、
いじめや体罰の問題、
ひきこもりや不登校の問題があるのですが、
だからといって、教育委員会や先生方が何もしていない、
というわけではありません。

じつは女性団体や私のところには、
多くの教育相談が寄せられます。
しかも学校での子どもの問題は、
たいていは学校との話し合いや、
さまざまな相談機関を経てもなお解決せず、
という深刻な相談が多いのです。
なかには、担任の先生や友達とのトラブルで、
2年半も中学校に不登校という例もありました。
授業中他の生徒に蹴られて、
保健室に行ってもなお暴力を受けて、
尾てい骨骨折でなかなか治癒せず、
学校の授業も座って長時間受けられなくなった子供の
相談などもありました。

まずトラブルの発生の仕方、
とくに起こってしまったことへの対応が
まずいというケースは確かに多いです。
そして時間がかかればかかるほど、
子どもも親も心理的に追い詰められ
健康状態が悪くなっていることも多い。

誰も助けてくれない、
誰も信じられないところまで追い込まれた子どもや親が、
駆け込んでこられます。
自らではなく、
どなたかが「ここなら必ず助けてもらえる」といって
連れて来られることが多いのです。

今回のケースは、
ほぼ1年くらい前からのことです。
女性団体に寄せられた相談。
もちろん即座に事実確認からはじまり、
当事者への寄り添いと問題解決に向けての
具体的な取り組みを行います。

この時に教育委員会の担当は生徒指導課。
9人しか職員がおらず、
しかもそのうち一人しか女性がいない。
その一人の女性は特に感性が豊かな方で、
「子ども」をとても大事にできる人。
そして女性センターの館長も
元もと中学校教員として「子ども」や親に
本当に愛情をもって労を惜しまず、
休日も返上で、当事者の話し合いに応じたり、
毎日のようにメールで励ましたり・・。
「体をつぶしますよ、あなたがそこまでしないといけないのですか?」と聞くと
「わたしも教育委員会の一員ですし、子どもは放っておけませんので」と。

以前の2年半の不登校の際も、
現在の生徒指導の女性主事がその学校におられ、
担任ではないのに、
毎日その生徒の家まで
「学校に行きましょう」と迎えに行っておられ、
その生徒は自らの意志で学校に通えるようになったことを
思いだしました。
もちろん何度も女性センターに
相談に来られる親の相手は女性センターの館長や
女性団体のスタッフがみんなで温かく対応して。

女性団体のスタッフと、
教育委員会の心ある女性職員を中心とする、
そして彼女らとともにうごく学校長や教職員、
 教育委員会職員。
いわゆる数人で構成される見事な連携と、
頭が下がるほどの粘り強い努力によって、
子どもや親が救われている現実を見ています。
素晴らしい「お助けチーム」が構成されています。
こう言えるのは、子どもの救済が、本来の職務とはいえ、
勤務時間や休日がどうのと言うこともなく、
とにかく「子どもありき」で行動されておられるからです。
職責を超える「愛情」と「実践」があると。
またそのピントがずれていないところが、すごいといえます。
こういうことができるのは、
単に「いい人だから」というレベルではなく
「人権」をしっかりと勉強しておられるからだと思います。
今日もう一つの卒業式。
本来午前中の卒業式に来るはずだった生徒が来なかった。
昨日の夜まで親子と話し合い、
来るはずだったのに来なかった。
また「お助けチーム」がそれぞれ動く。
学校長が、
「彼が来るまで待って、卒業証書を渡してあげたい」と判断する。

母親が校門の前でその息子を待つ。
その時間に、母親は、自分が母親たることに気づく。
自分の人生に精一杯で、
息子の気持ちを考えてやれなかったことに気づく・・。

彼女の人生を聞けば、
誰がそんな彼女を責めることができるでしょうか。
ここには書けませんが、
その彼女の人生に寄り添うことから始めなければ、
彼女の息子である生徒を助けることもできないのです。

そして彼は学校に来ました。
彼だって、卒業式に出たかったのです。
夕方4時ごろ、
堺市の某中学校の校長室で、
あたたかなもう一つの卒業式が行われました。
高検の試験を受けることになっている彼が、
卒業証書をもらった時、
先生方に言ったそうです。

「僕は、今度の試験が受かっても、もしもダメであっても、これから先はあきらめずに自分の力で頑張ります」

お助けチームは全員が号泣して、
喜んでおられたと。
今回のお助けチームを側面から支援されたのは
木谷教育次長であったと・・。

こんないい話を、
上記の登場人物以外の方から聞くことができました。